「ううん。すきな人が家族を大事にしてくれるって嬉しいんだなーって思った」

「………」

……本当に爆弾娘め。

片手で顔を覆って火照りを隠した。

咲桜の中の基準は、大分が在義さんに準じていることはわかってきた。

在義さん自身が邪道優等生とか苛烈な太陽の塊とか、危なっかしい評価ばかりされているあたりの、まさにそれを継いでいる。

もしかして、俺が在義さんを慕っていたのは咲桜に繋がるための布石だったのかもしれない、なんて思ってしまう最近だ。

「……宮寺のことなんだけど」

「……うん」

咲桜が居住まいを正した。ってか、真面目な話でもしていないと危ない。

「俺が美流子を探してる経過の中で顔見知りになったんだ。――美流子のこと、聞いたんだよな?」

「……うん」

咲桜は素直に肯いた。

別に吹雪たちに口止めもしていないから、幼馴染の関係上、咲桜にも知れていて当然の話でもある。

「降渡に言われたんだけど、龍さんとこで聞いたんだろ? 松生も」

「……お三方は筒抜けだね……」

「隠しても意味ないからな。まあ――それで、やたらと――とくに俺に反目してきてな。俺が、中等部が桜庭だって知ったら藤城に入って堂々と宣戦布告してくるし、常に喧嘩腰でなあ……」

なんか知らんが、やたらと張り合って来た。

「……それって、最初に逢った時に流夜くんから喧嘩売ったとかではないの?」

「無害な人間にまで喧嘩売らねえよ」

宮寺は、今は厄介な位置にいるが人畜有害ではないない。

「夜々さんは?」

「あの人は俺に限り有害だろう」

俺と朝間先生の職務を除いた関係。互いに、やられたらやり返す方式だろうか。

「当時の宮寺がどういう意図かはわかんないけどな。暇だったんじゃないか? 適当に敵対出来る相手がほしかったとか」

「……あんまり一般的ではない解釈だよ、それ」

そうか? と見返すと、咲桜は胡乱な目をしている。