「ごめんな、面倒になって」
「ううん。ここに来るのも無理してくれたんでしょ? ありがとう」
「咲桜に逢えるんだったら無理なことなんてない。……連絡、ありがと。こっちのことに巻き込んでしまったから、逢いに行きたいとは少し言い出しづらかったから」
流夜くんが苦笑した。
「……うん」
笑満の言う通りだった。
私の全部を包むほど、器の大きな人だったよ。
「とりあえず、この前中途半端にしてしまった話をしたいんだけど……」
「あ、そうだよね。あがって」
流夜くんの手を取って階段の方へ向かった。
「咲桜? 話だったらリビングで――」
「あ、えっと……私の部屋じゃダメ?」
「駄目」
「……一応片付けてあるよ?」
「尚更駄目だ。リビングだったら在義さんの牽制があるから」
なんかもそもそ言っている。
……在義父さんがいつ帰ってくるかわらかないから、尚更二人きりで話したいんだけど……。空いている手を握った。
「……二人だけで話したいんですよ」
「………………わかった」
長い沈黙のあと、流夜くんは肯いてくれた。