「素直って……どの方向に?」
「邪魔しないって方向に。それ以外は気にしなくていいよ」
「……いいの?」
「今はね。今ちょっと咲桜んとこ問題発生だから、頼のこと考えるのは後々でもいいよ。……頼は咲桜の友達やめないから」
「……うん?」
笑満は何を知っているんだろう。明らかに私よりも、頼に何があったか知っているようだ。
そのままなんとなく教室へ向けて歩き出した。
「笑満、遙音先輩と帰るんでしょ? 私先に出る――」
「―――――」
ボッと笑満の顔が緋色に染まった。
「……笑満?」
「ど……どうしよう咲桜! あ、あたしなんか勢いで肯いちゃったけどそうなんだった!」
忘れていたんか。
いや、衝撃が大き過ぎて現実と理解出来ていなかった方だろうか。
「どうしようって……先輩と休みの日に逢ったりしてるんでしょ?」
二人の仲が親密なのはよく知っている。仲良しだな、と何度思ったことか。
「学外は大丈夫なんだよ、なんかあたしは。一緒に帰ったこともあるけど、非常事態発生のときだったから必要に迫られてだったし――こ、こんな風に約束して帰るなんてないんだよ……!」
両手をわなわなさせている。……恋する女子ってこんな鬼気迫るカオするの? 頼に指摘されたさっきの自分もこんなんだったんだろうか。
そりゃ頼もひくわな。
しかし私は笑満のこと友情的に愛しちゃっているのでこの程度ではひかない。
頼も浅いな。
「笑満、これ使う?」