「え? なんで?」
笑満ちゃんの声が沈んだのが気になって見れば、少し暗くなっていた。
まさかとは思うけど……気にしてる?
「んー、気になるって言っても、あいつが咲桜に惚れ込んでるからかな。こんな奴だったんだーって発見ばかりだから、そんな顔させるってすげーな、と」
そう説明しても、笑満ちゃんの顔はあまり変わらなかった。
……離れた頃の笑満ちゃんにはなかった表情。成長して、そんなカオもするようになったのか。……かわいーな。
「別に気があるわけじゃないよ。そんなことになったら俺、あいつにすぐ消されるだろうし。一番大事な子は、笑満ちゃんだから」
「え……」
「みちゃん」
それはずっと、変わりない。
小さな頃は、いつも遊んでいるご近所の友達だった。
中でも、よく懐いてくれて俺が行く場所にはいつもいた。
事件があって、でも笑満ちゃんだけは俺に対する態度が変わらなかった。
離れてしまうことになって、どれだけ傍にいてくれる存在の重さを知ったことか。
出来るなら笑満ちゃんとは繋がっていたかったけど、自分の置かれた状況もわかっていた。
笑満ちゃんに迷惑をかけることになる。
それは嫌だった。
黙っていなくなって、高校に入って再び出逢えた。
神宮や二宮さんたちに庇護されていた身として、今、自分の状況はあの頃とは全然違う。
……すきな子にだって、そうと言えない。
笑満ちゃんと自分の関係、神宮と咲桜の関係は違うけれど、事件に巻き込まれ、家族を亡くしている点では一緒だ。
……神宮の強さが羨ましい。華取さんに睨まれたって、咲桜の恋人でいることが出来ている。
――だからこそ、憧れは強くなる。
すきな子にすきと、言うことが出来ない……。
まだ、大事な子としか言えない。
誰かに掻っ攫われるようなことがあったらどうしよう。絶対に平静でなんていられない。大事過ぎて。
……笑満ちゃんの家族にも、嫌われるのが怖い。――いや、嫌われるどころか、今は疎まれているのかもしれない。
もし、逢ってしまえば。
笑満ちゃんを攫ってしまいそうだ。世間とか、はばかるべきものもぶっ飛ばしてただ笑満ちゃんが――愛しい子が、ほしい。
やべ。……だからそれはナシだって。
思考の中で自分を戒める。
「笑満ちゃんの弁当美味そうだね」