「わかったー」

笑満が応じると、降渡さんが軽く目をみはった。

「えらく素直に受けるんだね」

「遙音くんはあたしに嘘は言わないから、信じますよ、ずっと」

「付き合ってんの?」

「えっ……」

笑満、顔真っ赤。先輩は苦い顔になってしまった。

先輩がどう思っているかは知らなけど、笑満の決意を聞いている私は焦った。こんなところで二人の関係をこじらせるわけにはいかない。

「付き合ってると言えば、私、流夜くんと正式に付き合うことになりましたから」

無理矢理自分の方へ話を持って行った。ちらりと見てくる笑満は申し訳なさそうな顔だ。私は気にしないで、というように微笑んだ。

「あ、だよね。一応りゅうからそこは聞いてるんだけど、さっきの寝言って何?」

降渡さんが食いついてきた。

「あれは――

「そもそもりゅう、ちゃんと寝ること出来てんの?」

へ? 流夜くんのそれを聞いたのは抱き付かれが前提にあるのでどう説明しようか迷っていると、降渡さんが身を乗り出してきた。

「どういう意味ですか?」

「あいつ、超不眠症じゃん」

「そうなんですかっ?」

私がいると――私に抱き付くとよく眠っている流夜くんなので、そんなこと気づかなかった。

降渡さんが吹雪に目配せをした。話してやれよ、という瞳だった。

「僕、中高と寮で同室だったんだけど、毎日結構な量の睡眠剤使ってたよ。生後間もなくの経緯も悲惨だし、その後に親戚たらいまわしにされてるからね。安穏(あんのん)と休むことには縁がなかったみたい。今も改善されたのか知らなかったんだけど――咲桜ちゃん、眠剤とか使ってるの見たことないの?」

ぶんぶん首を横に振った。眠剤とかそんなもの、影を見たことすらない。

「でも寝言聞いてるんでしょ? それって流夜寝ちゃってるじゃん」

墓穴。

まさか流夜くんにそんな体質があったとは知らなかったから……。

「そう、寝言言うんですよ。私は眠剤とかは知らないんですけど、『みるこ』って言ってました。ミルコ・クロコップ?」

「それではないね」