「そ。中学で寮に入って、卒業して家に戻って――最後の子供が帰ってきたのを見て、祖父さんは眠るように死んだって。老衰らしい」
「そうなんだ……」
笑満の声がどこか潤んで聞こえる。しかしすぐに首を傾げた。
「ん? 最後の子供って? 龍生さんと血縁関係あったっけ?」
「あ、じゃなくて。二宮さんの祖父さんって、ワケありな子供を引き取って育てることが多かったんだって。農家だから自給自足出来たらしいし。その引き取った子供たちの中で、あいつと雲居が最後の子供だった。春芽は親兄弟生きてるけど、同郷だからほとんど三人で育ったらしい」
「なんか……すごい人っているんだね……」
「まあ……雲居は反面教師なクソジジイだって言うけど……」
ぐすりと目をこする笑満の隣で、先輩がぼそっと言った。
それでも、事情のある子供を引き取って育てようという気概がすごいと私も思う。
最後の子供という三人も、真っ当に生きているのだ。
育て方も――……まっとうに……あれ? ……すみません、ある一人を思い出して言いきれなくなりました……。あの毒舌美人。……あ、怒られる。
ふと、先輩がこちらを見た。
「そういうわけでさ……あいつ、育ての親も死んじゃってるからか、自分のことろくに話さねーんだ。昔っから。今の話も雲居と春芽から聞いたのだし。言えない部分、多いと思うんだ。……出来たら咲桜、怒らないでやってほしい……」
「いえ、怒る理由にもならないので――」
流夜くんほどの今も続くものを抱えていて、そう簡単に話してくれなんて言えない。
私も抱えたものがあるけれど、それはもう終わっている。
桃子母さんの命は、終わっている。
「オトってかなり流夜くんの味方だよなー」
いつの間にか頼が復活していた。もそもそ食べている。って言うかお前も流夜くんって呼ぶのかよ。半眼。