「……あたしは、いつまですきでいられるのかな……」
「遙音先輩を?」
こくり。笑満は肯いた。
「あたしの家族が、遙音くんをどう思ってるのか、とか……全然わかんないから……」
「………」
笑満の家族は夏島の家にあった事件を直接的に知っている。
けれど、遙音先輩の助けにはなれなかった。
笑満は、家族はむしろ先輩の存在を忌避するのではないかと心配している。
……そのために、告白をする決心も至らない。
「そうだね」
隣に座る笑満の頭に手を廻し、軽く抱き寄せた。
「難しいよね」
難しい。恋ごとだけでは収まらないのが、笑満と先輩の世界だ。
「……やっぱ咲桜って笑満の彼氏みてーだな」
「ええっ⁉ 笑満ちゃんって咲桜と付き合ってんの……⁉ ってか、咲桜が二股……⁉」
「「………」」
いきなり割って入った声に、笑満とともに固まってしまった。
私が笑満を抱き寄せた格好のまんまで。
により。頼の口元が愉快げに歪んだ。
驚きに顔を蒼ざめているのは遙音先輩だった。
「よう、オト。知らねーの? 咲桜と笑満の仲って一年じゃ公認なんだ」
「マジで⁉」
「「………」」
このくそ優等生問題児……! あることないこと――いや、今の発言はあることだけだったけど――吹き込みやがって……!
「先輩素直過ぎですよ! 頼の話なんて半分嘘だと思って聞いていいから!」
「え……あ、そうだよな、やっぱりそんな言われ方しないよな……」
私の言葉に安心が大きかったようで、安堵に顔を緩める先輩。
……ごめん、遙音先輩、その言われ方は真実です……。