先日、頼が遙音先輩のクラスに乗り込んで追いかけ回してキレた先輩が流夜くんのところへ怒鳴り込んでくる事件があった。

あの折、流夜くんから頼に、先輩を追いかけ回さないように言うと言っていたのだけど……。

「あー、咲桜」

ちょいちょいと笑満に手招かれた。

「頼と遙音くん、普通に友達みたいになってるの」

友達?

「そうなの? 大丈夫?」

「だいじょーぶ。もう写真撮らせろとか言ってないから」

「それで代わりに笑満がからかい対象にされていると」

「……そうなんだよ………」

笑満がうなだれた。またややこしいことに……。ふと、笑満がかすかに顔をあげて訊いて来た。

「……あのさ、本当に流夜くんと逢えなくなっちゃったの? 宮寺先生来るのって金曜日だけでしょう?」

「学内ではね。家の方は、そこまでつけたりはしないだろうからって。今までみたいに頻繁には来れないけど、うちに来てくれるって、昨日言ってた。近づいちゃダメなのは学内だけだって」

「昨日逢えたの?」

「ううん。電話くれた」

夜、遅くなってからだったけど、時間を見つけて連絡をくれたのだ。

昼の電話で、盗聴どうのって言っていたから出ていいものかと一瞬迷ったが、指は正直だった。

出ると少し疲れた声の流夜くんが、何度も謝ってきた。

すぐに戻らなければいけないと言って、話したかったことはまたちゃんと時間を作る、宮寺や周囲の人に何を言われても、それは真に受けなくていいと言われた。

そして、逢えないのは学内でだけだから、と。

最後の言葉にどれほど自分の心が浮いたか。

浮かれ気分でハイテンションな返事をしてしまったのが今は恥ずかしい……。

疲れている流夜くんは、張っていた気が少し緩んだように「ありがとう」と言った。

ありがとう、はこちらなのに。

「安定でラブラブだねー」

「……そういう言い方しないで」

恥ずかしいでしょうが。