昨日の晩ご飯を作り過ぎて在義父さんにびっくりされた。
半ば無心になってキッチンに立っていて、在義父さんが帰ってきた頃には机に出来たご飯が所せましと並んでいた。
意識がはっきりすると自分でも驚いた。淋しさのパワーすごいな。
今回の件で流夜くんは、本部ではなくて近くの上総署に呼ばれたらしい。
在義父さんは本部に詰めているから、流夜くんとは逢っていないとのこと。
さすが多すぎたので、お隣に持って行ったり、笑満と頼の分のお昼ごはんも持って来た。
笑満にはメールしてある。
頼は購買で買っているので、調度いいだろう。
あとは……流夜くんの分。
旧校舎へ行けないから、渡すチャンスもない。けど、やっぱり一番に食べてもらいたい人。包みを持ってきてしまった。
「はー、咲桜のご飯ってほんと美味しんだよねー」
昼休み、笑満はご満悦だった。嬉しそうに食べてくれている。
無言で受け取った頼は、包みを開くなりカメラを取り出し写真を撮ってから食べだすと言う、相変わらずの頼テンションだった。
「こんなに作って大変だったでしょ?」
「うーん、作ってる間の記憶が朧で……」
勝手に手が動いていた。笑満はにまにまする。
「いじらしいねー。頼、あんたも咲桜のこういうとこ見習いなさい」
「……俺がいじらしくなってもきもいだけな気がする……」
「……うん、ごめん、そうだね」
笑満は申し訳なさそうに視線を泳がせた。私も考えてみる。いじらしい頼? ……却下だ。
「笑満ちゃんそこは否定してよ」
「んなっ! ……あ、あんたが笑満ちゃんって言わないでよー」
「やっぱ笑満ちゃん呼び大事なんだー」
珍しい。笑満が頼にからかわれている。頼はどこか楽しそうだ。……ん? 笑満ちゃん呼び?
「ちょ、頼! まさか遙音先輩に何かしたの⁉ また乗り込んだの⁉」