宮司のこと、逢って説明したい。

面倒、行き違いが起こる前に手を打っておきたいのだが――こちらも捨て置けない内容だ。

犯罪事件は、被害者家族は一刻も早い解決が待たれる。

生まれたときからその渦中に置かれた身としては、身を切るほどそれを思い知っている。

宮司がまだぼけっと突っ立っているのを横目に見て、咲桜にメッセージを送った。今日は行けなくなった、と。

心苦しいが関係を隠さないといけない現状、相手の名前に咲桜とは登録していない。

割と珍しい名前だと思うから、下の名前だけでもバレてしまう可能性があるからだ。

咲桜に了解はもらっていて、咲桜の方から『じゃあ『桜』で登録しといて』と言われたので、俺が今メッセージを送った相手は『桜』という名前だ。

……咲桜に逢いに行く約束を自分から取り付けたのに、自分でそれを破る。……もの凄く、心が痛い。

咲桜のことだから、――異端の警察官を父に持つ咲桜だから、俺の状況も理解してくれるだろう。

でも、やはり淋しい思いはさせてしまうのかもしれない……。

愛しさに現実は優しくない。試すようなことばかり起こしやがって。……まあ日義の件は、それがきっかけで咲桜との距離が近くなったような気がするけど。

愛しさの募る毎日。
 
本音は、逢えたら抱きしめて離したくない。本当に攫ってしまおうかなどと危ない発想まで起こってしまうこの頃だ。

……在義さんの目を気にすると、さすがに華取の家で過度にはいちゃつけないので。

在義さんの爆弾発言の影響で、うちへはほとんど呼べなくなったし。

「神宮、上総署行くのか?」

いつの間にか宮寺が復活していた。

「だから何だよ」

邪魔っ気に返すと、メンタルの強い宮寺は平然と答えた。

「俺も行くから」

「………」

「ストーカーじゃねえよ。百十番押すな。鑑定資料持ってくんだよ」

「………」

電話を持つ手を下した。

これでもこいつ、大学で遺伝子学の研究をしているヤツだ。

警察が司法解剖、検死などで意見を依頼する高名な大学でもあるので、宮寺も警察とは少し縁がある。

俺たちほどガッツリ足を突っ込んではいないが。

「そーいうわけだから。お前、学校じゃかなり仮面かぶってるみたいだな」

宮司はからかいネタを見つけたといわんばかりに愉快そうな顔をする。

「俺がお前の本性ばらしたら、色々オマケまでばれちゃうよな」