「知らねーよ。降渡に訊け」

「……もう連絡取ってないのか?」

「俺は一度も取ったことない。絆ははじめっから降渡の」

「……そこに邪魔したのはお前だろ」

「邪魔なんかしてねーよ。……何度も言うけど、俺は絆を振ってもないし弄んでもない。俺が知る限り、絆は降渡しか眼中にないしな」

「そこに割って入ったんだろ、お前が」

「違うつってんだろ」

声にイライラが混じってくる。これ、何年越しのやり取りだろうか……。もう面倒くさい域だ。

「それから、今はちゃんと婚約者いるから」

「………は?」

俺の言葉に、宮寺は間抜けな目を返してきた。

「誰に」

「俺に。ちゃんとお互いの意思だ。だから俺はもう絆に関わることもないから、お前に付け回される覚えもない」

「………」

宮司は放心したように固まってしまった。顔の前で軽く手を振ってみたが反応がないので、今のうちに帰ることにしよう。

幸い、宮寺が車の移動に邪魔になる位置にいなかったので、本当に放置して帰――ろうとしたところで、電話が鳴った。上総警察署だった。

出ると吹雪で、上から署に来るように要請があったという。発生した事件に、専門家として意見をもらいたいということだ。

――日本で取ったのではないのであまり言ってはいないけど、一応は犯罪学の博士号を持っているわけだから、学者を名乗れるんだけど。

咲桜を待たせてしまうな……。こんなときでももう、優先的に考えるのは咲桜になっていた。