『うん。わかった。流夜くんがうちに来てくれるってことでいいの?』
「ああ。少し遅くなるかもしれないけど、待っててくれるか?」
『うんっ』
「あと、電話もしばらく出来なくなる。あいつのことだからどこから盗聴電波飛ばしてるかわからないから」
『……宮寺先生って、何もの? 警察の敵になるような人?』
咲桜の声が、胡乱に平坦になった。
「俺を一方的に敵視してるだけだ。在義さんと敵対はしない」
……この説明でわかってくれるだろうか。咲桜は――在義さんの娘は、肯いた。
『そう――じゃあ、待ってるね。気を付けてきてね』
「……ありがとう」
いつもなら名残惜しく通話終了ボタンも押せないのに、咲桜の安全のためを思う今日はすぐに通話を終えた。
「………」
宮司琉奏。俺らと敵対した同学年。何らか目的あって講師を引き受けたのか――それともただ、卒業生として戻ってきたのか。
……降渡以上に面倒くさい奴との再会だった。
こんな気持ちの落ちるときは、尚更咲桜に逢いたくなる。逢って、腕の中に置いて離したくなくなる。
「………」
咲桜が恋人であること、それだけは隠し通さねば。