「だからねぇ、咲桜ちゃんへの態度見てると、あれって誰よって言いたくなるのがほんとのとこ」

「……そんなもんですかね」

「そんなもんよ」

夜々さんが大きく肯くと、笑満が声を挟んできた。

「あの、宮寺先生って……」

「ああ、宮寺くんは神宮さんたちと同期よ。桜庭の突出し過ぎた三人に張り合った唯一の生徒ってことで、うちでは有望株だった」

「じゃあ高校時代の先生のことも知ってるんですか?」

「勿論。特に宮寺くん、神宮さんに対抗意識持ってたからね」

また喧嘩しないといいんだけど。夜々さんは物騒なことを呟いた。

「宮寺くんの講義、週一回で三週あるみたいだから、咲桜ちゃんその間は大人しくしてた方がいいわよ?」

「? なんでですか?」

「……教師が生徒と婚約、付き合ってるって、言っちゃえば禁断よ?」

「………」

そうだった……!

どうにも周りに容認してくれる人ばかりだから失念していた。

がーんという効果音のつきそうな私を隣に、笑満は軽く息を吐いていた。

確かに、二人の関係を知って護ろうとしてくれる人ばかりなのは特異な状況だ。

先輩や吹雪さん、降渡さんは流夜くんのために、笑満や頼、夜々さんは私のために。

……二人の関係は恵まれている、と言えるのかもしれない。

「自分の恋を護れるのは自分だけなんだから、気を付けて頑張るのよ」

夜々さんから――長い片想いをする夜々さんからの言葉は、私だけでなく笑満の胸にも深く落ちたようだ。