「んー、咲桜ちゃんが知らないみたいだから言ってなかったんだけど、高校生の神宮さんってあんな感じだったのよ。何事にも冷たくて、怖い感じ。常に周りを威嚇しているような、ね。怜悧な美貌、感情表現に乏しい眼差し、他人の興味のない喋り方。……うちでもそんな風に言われてたわ」

「夜々さん、高校生の頃知ってるんですか⁉」

初耳だ。在義父さんの言いつけだから流夜くんのプライベートを明かさない、とは明言していたけどそれ以前からの知り合いだったの?

私の動揺を見て取ったのか、夜々さんは苦笑した。

「こっちが一方的に知ってただけよ。あの三人――雲居くんと春芽くんと、すごい有名だったし。私は在義兄さんを通しても知ってたからね」

「ど、どんなでしたか?」

「ん? 言った通りよ。冷たくて怖い感じ。だからここに教師として入って来た当初は私も気づかなかったわ」

「か、カッコよかったですか……?」

「さあ?」

「さあって……」

「私、在義兄さん以外をカッコいいとか思ったことないからわからないわ」

――ああもう本当に早く結婚してくれないかな。

夜々さんが――幼い顔立ちで愛らしく、保健室の天使と言われ慕われる夜々さんが、なかなか結婚しないのは藤城では謎になっている。

振った人の数は知れないが、私と笑満は夜々さんがどうしてそれを受けないのかは知っていた。