「はじめまして。雲居降渡です」

「あっ、松生笑満です。遙音くんの友達です」

「遙音の、ねー」

にやにやと降渡さんが見てくるからか、先輩はふいっと顔を背けてカウンターに戻った。

「あの、雲居さんも遙音くんのために動いてくださった方ですよね。ありがとうございます」

先輩の過去をつい最近知った笑満は、流夜くんだけでなく吹雪さんや降渡さん、龍生さんにもお礼を言っておきたいと言っていた。

降渡さんはにっこり人懐っこそうな笑みを見せる。

「降渡でいーよ。笑満ちゃ

「だから馴れ馴れしーんだよ、お前は」

ゴンッ

今度はお盆で頭を叩かれた。先輩に。……さすがに痛かったようだ。

「遙音―」

「笑満ちゃんに変な奴近づけるわけねーだろ」

降渡さんが頭をさすりながら睨むと、先輩に軽蔑の眼差しを向けられている。

……ここはここでどういう関係なんだろう。先輩は基本、流夜くんたち三人全部がからかい対象なんだろうか?

ふと、降渡さんが私を見た。

「そういや咲桜ちゃん、ここへ来ること、りゅうには?」

「言ってありますよ。在義父さんにも」

「何か言われなかった?」

「あー……まあ、言われたことはあるんですけど……」

「なんて?」

「んー、ここで言うのはちょっと」

「誰にも言わないからさ」

「そういう意味ではなくてですね」