ここは保健室じゃなかったっけ?

相変わらず非道い間柄に困りながらも、「お願い」と言って室内からは見えないようにしゃがみ込んだ。

足音が近づいて来たので、夜々さんは窓を少しだけ開いているようにして、離れた。

こっそり窓から室内を覗くと、正面から少しずれて流夜くんと宮寺先生、夜々さんの背中が見える。

「朝間先生、なんでこいつがいるんですか」

苛立ちを隠せない流夜くんの声。

続けて「夜々子先生こんにちはー」と、宮寺先生の声がした。

「宮寺くんが今度の講師だからかしら」

夜々さんはいつも通りのおっとりした喋り方で、全然動揺が見られない。

「むしろ教師のお前が知らねー方が問題ある」

宮寺先生に言われ、流夜くんはむっとした顔になる。

「てか、何でここにいる、はお前の方だろ。桜庭の神宮流夜」

「……仕事してるだけだが」

「夜々子先生、もしかしてここの先生たち、神宮だって気づいてないんですか?」

「そうみたいねえ」

「何も隠してねえよ。向こうが気付かねえだけだろ」

棘のある口調に、流夜くんの新しい面を見た気がした。

学校で――本校舎内でこんな素で話すのは初めて聞いた。

……これもカッコいいと思っちゃうんだけど。

私、流夜くんだったら何でも受け入れ態勢なのかもしれない。

嫌いになるどころか、非の打ち所さえ見つからないなんて。