生きていることを赦(ゆる)してもらうためにがんばっていた。
私が話した唯一の流夜くんはそれを知って、『がんばらなくていいから胸を張って生きろ』と言ってくれた。
今は、『流夜くんの恋人』と胸を張って生きるために、がんばりたい。……それだったら、いいかな。
それを流夜くんに言ったら、そんなことがんばる必要ないだろう、とか言われるかもしれない。でも、これは女子的意味あいだ。だから、それは流夜くんには秘密。
「……遅いな」
流夜くんが出て行ってから、もう十分近くなる。
最初は、説得に苦労して帰ってこないかと思っていたけど、なかなか遅すぎる。
先日、在義父さんからも《白》解禁令が出ているから、今は堂々とお店に入れる。行ってみようかな。
「こんにちはー」
猫の首輪みたいな鈴を鳴らしてドアを開けると、途端に大声が響いた。
「だからなんであんたは――!」
「だからお前はもう俺と結婚しろ! ずっと大事にするって決めてるから!」
………。
「へ?」
私からは思わず間の抜けた声。
店内では大声で、降渡さんが全力プロポーズしていた。
END.