「どうせお前、講師だけじゃなくて、ここの非常勤講師、なったんだろ。そんときにでも話す」

「ちょっと待て! 気になり過ぎる!」

「悪いな。待たせてんだ」

「あ――、ああ、そうか」

基本的に人の言い宮寺が反射的に肯くと、その間に教室を飛び出し――かけて、振り向いた。

「この一年はまだここにいるつもりだから、もう逃げる先もなし、いつでも喧嘩売って来いよ」

そう残して出て行った。

出る間際、宮寺が呟いているのが聞こえた。

「……華取さんすげーな。……あいつも人間だったのか」





「おかえりなさい!」

「わっ、……ごめんな、待たせて」

ドアを開けると咲桜が飛びついてきた。少し驚いてしまったけど、柔らかい髪が胸元に寄るのが嬉しい。

………。

「咲桜、やたらに出てきたら危ないだろう。ここだったら遙音や日義が来るかもしれない」

まさか自分だと思って抱き付かれたら、相手をぶっ飛ばさないと気が済まない。仮にも生徒だけど。

「え? 足音で誰だかわかるよ?」

「………」

そう言えばこの子、耳がすごくいいんだった……。

「じゃあ昨日もわかってたのか?」

華取の家を訪れたとき、すぐに飛び出て来たけど――

「あれは玄関でスタンバってました」

外にいると怒られるからー、と照れ照れという咲桜。

「いや部屋にいろよ。風邪ひくだろ」

「すぐに逢いたかったので」

「………」

なんだこの可愛い生物は。ぎゅーっと抱きしめると、咲桜がわたわたした。