高校の頃、俺の傍らには大体女子がいた。

そのタイプはバラバラで、本当に見境がないと思われていたのも知っている。

ただそれは自分から望んだ『彼女』というものではなく。

あの頃護りたかったものは、体面上の『彼女』ではなく、『幼馴染』だった。

だから、二股にはならないようにだけはして、あとは相手の思うようにさせておいた。

そうすれば、学問以外興味のない俺に、『彼女』のことも見ようとしない俺に、相手は興味をなくして離れて行った。

それがたくさん繰り返された。

過去にあった事実はそれだけだ。

「………ほんとか?」

宮寺の声は胡乱に誰何(すいか)している。

「事実だ。絆のときは、少々俺も対応を間違えた。絆を、降渡に言い寄ってくるほかの女子同様に捉えてしまった。だから、追い払おうとした。……降渡にばれてぶん殴られて絆にも謝った」

宮寺は十秒ほど黙った。そして半眼で口を開いた。

「……………いくら春芽たち巻き込まないためつったって、お前最低だろ。絆先輩のことは軽率に変わりないじゃねえか」

「……宮寺の中の俺の評価は変わらなくても構わない。ただ、咲桜のことを学生の頃の相手のようには考えないでほしい。本当に、俺の方が惚れ込んでるくらいだ」

「こっ恥ずかしいことさらりと言うのは変わんないのな」

はー、と、長い溜息が出た。

「じゃあ、華取さんのことぞんざいに扱ったら、お前の悪行ばらすからな」

「構わない。絶対にないからな」

「つーか、気になるのは華取さんとの馴れ初めの方なんだけど。まさかお前が生徒の一人に気ぃ抜かれました―、なんて言わねーよな?」

「……また今度話す。面倒な登場人物が多すぎる」

「登場人物? 別の生徒とか教師か?」

「在義さんと愛子と龍さん」

「なんで凶悪警察組が関わってくんだ⁉」

「在義さんを凶悪とか言うなよ」

「その人が一番凶悪だろ!」

宮寺は、在義さんはともかく――咲桜が認めてもらっているとか言っていたから――なんで警察関係ばっかり出てくるとばかりに叫んだ。