俺が宮寺を連れて来たのは手近な空き教室だった。
移動に時間をとられるわけにもいかない。
部活や放課後の教師の動向の基本も把握しているから、誰も近づかないそこにした。
「――で。何、今頃言い訳? なんで」
「別に誤解されたままでも構わなかったんだが、咲桜のことがある以上話さんわけにもいかないかと腹を括った」
「そこまで大事なのかよ……。つーか、今更興味ない。お前が絆先輩を傷つけたって変わらない事実があるだけだ」
「絆にはとっくに話してある。ゆるされてはいないが、お前のような誤解抱いたままではない」
「………何か不愉快」
帰るわ、と宮寺が扉に手をかけたとき、……嫌々ながら声を押し出した。
「俺が吹雪と付き合っている」
「―――え、」
「と」
「ちょ――マジな話かそれ」
「噂をばらまかれたんだ……」
「………は?」
宮寺から、威嚇とも気の抜けたともとれる応答があった。苦々しく言葉を吐き出す。
「俺と吹雪が同い年で、降渡が一つ上なのは知っているだろう」
「――雲居は高校でわざと留年してっから、それ以上は同学年なんだろ?」
「ああ。それで――断った告白のうちの誰かにそんな話を流されてな……。吹雪はあの容姿だから更に誤解招いてな……。ただ単に、あいつらを巻き込みたくなくて、それ以降の告白を断らなくなった、俺にあるのはそれだけだ」