「…………」
そう返せないのが、今の自分の位置だ。
生徒というしばりの。……でも。
「すきですよ。ずっと、絶対」
「――え」
顔をあげた宮寺先生と目が合った。
「えっ! ご、ごめん! そうだよね、別にすきになっちゃいけないとかないよね、だからあの――泣き止んでください!」
懇願された。……泣き?
頬に触ってみると、涙がまとわりついてきた。な、何故泣く! 自分!
焦って困って顔をこすっていると、隣で宮寺先生も困っていた。
「すみません、なんか踏み込んだこと訊いちゃって……。教師と付き合う、とかはないけど、すきでいるくらいは気持ちの問題だよね。……――ただ、あの
「そこまで、宮寺」
ふっと、視界が昏くなった。雲? 違う。隙間から太陽の光を見せているのは、大きな手だった。
「え―――」
「じんぐ――――」
「もうそこまでにしてやってくれないか。こんなに泣かせて」
「う……悪い。華取さんも、ごめん」
「い、いいえ――」
「少し、耳をふさいでいてもらえるか?」
そう言った流夜くんの顔と声が、『神宮先生』でなく『流夜くん』のもので、驚いてしまった。
学校で――しかも宮寺先生がいる目の前で、生徒にそんな態度をとっていいの?
困惑している間に、流夜くんがそっと後ろから私の耳に手をあてた。
直接は触れていないから、完全に音が聞こえないわけではない。
「神宮? 華取さんに何して
「自分の女泣かされて見過ごす馬鹿がいるか、阿呆」



