「んー、まあ。友人、ではないんだけど、顔見知り、かなあ」
宮寺先生はぽつりと返して来た。
「神宮先生が、どうかされたんですか?」
ここまで、そう決める。
自分の技量で、そこまで踏み込んだことを訊いても対応出来ない。
あとは、宮寺先生が言ったことに適当に肯いておこう――
「随分変わったなあ、と思ったり、変わってないなあと思ったりしたんだ。神宮が中学でアメリカ留学する頃に知ったんだけどね」
「そうなんですか」
以前、流夜くんからそれは聞いていた。今は、知らない風を装うべきだろうか。
「うん。何かの特待生に受かったらしくて。それで向こうで――って、これは言っちゃダメか……」
途中まで饒舌(じょうぜつ)に話してくれたのに、宮寺先生はふつりと言葉を切ってしまった。
たぶん、私事に関わることを言いかけたのだろう。
『在義父さんを通して神宮先生とは知り合い』、という設定の話は結局、宮寺先生にしていないから知らないことだと思っているのだろう。
……この辺りで明かしておくかな?
「――華取さん、神宮のこと、気になる?」
「え? なんでですか?」
ドクッと、心臓が一度大きく鳴った。
「いや、今の返しがね? もしかして神宮のこと知ってたんじゃないかなって思って。あ、俺の勝手な見方なんだけど、それで、神宮と親しい仲ってことは……ないよね? ……もし、教師とか生徒とか関係なしに恋愛感情があるなら、あいつだけはやめておいた方がいいよ」
「――――」
観察眼。図抜けている。
――そんなもの、あるに決まっているじゃない。
だって流夜くんは、一生かけてすきでいる人なんだから。