級友に心配そうな顔をされたが、構っている余裕のない俺は頼の首根っこ摑んで廊下の隅に引きずった。
「お前な~」
「え? あ、ごめん?」
「わかんねーで謝んな! お前の学習の仕方はタチが悪い!」
「えー」
「黙れ! 宮寺に余計なこと言うんじゃねえ!」
「それたぶんオトが一番余計な言い方してると思うー」
「語尾を伸ばすな!」
「それも流夜くんの教え?」
「二宮さんの教え!」
「二宮……? ああ、在義パパの親友だっけ? あれ? そこってオトとどう繋がるの?」
「それはじんぐ――うっ!」
っと、息が詰まった。
やられた! 嵌められた! 頼が二宮さんのことを知っているかはわからないけど――半ば盗撮じみたことを咲桜にしかけていたらしい頼ならたぶん知っているだろうけど――危うい危うい。神宮の名前を出すところだったぜ。
「じんぐ、う? んー? あ、神宮先生がどうかしたのか?」
「―――」
級友の一人に訊かれた。
……そうでした。この学校は並々ならない頭脳、思考をする奴が多いのでした。
その筆頭たる頼が変人度ぶち抜いているから、一般レベルの頭の良さの基準が狂っていた。
くっそ、こういうとき勘がいい、頭の回転が速いのは厄介だ。
「神宮先生じゃなくて神宮球場だよ。野球の席で知り合った豪放磊落な方が二宮さんってんだ」
「……遙音野球すきだっけ?」
「たまにすきになんだよ」
怒っているような口調で言い放った。
俺の言動にツッコミどころが多すぎて、そうか、触れてはいけないんだな……そんな風に遠い目で悟った友人たちだった。すまねえ。
「じゃあな。宮寺、学内で俺に近寄るなよ。めんどくせえ」