「んな話どうでもいいから。宮寺もほいほい生徒に声かけてんじゃねえよ」

「講義しに来ててそれはないだろ」

「………」

確かに。

返答に窮している間に、みんなが身を乗り出してきた。

「宮寺先生、遙音とどんな知り合いなんですか?」

「遙音って医学方面じゃないよな?」

「宮寺先生に質問あんですけど今いいですか?」

「宮寺先生とオトって仲良しなんですか?」

『⁉』

気づくとそこには何故か頼も混ざっていた。

「ちわっす、先輩方」

軽く手を挙げて挨拶する。みんなはさっと蒼ざめた。い、いつも遙音を訪ねて来ては二年生を戦々恐々とさせていく後輩……! 

そんな困惑が顔に見て取れる。

「あれ? 君だけ一年生?」

「はい。オトのおっかけです」

『………⁉』

なに言ってんだこいつ⁉ 普段から何言ってんだこいつなことしかしないけど、本気で何言ってんだ⁉

先輩たち、蒼ざめるどころか血の気が引いていってるよ……。

「……夏島って男にモテるの?」

「んなわけあるかあっ! 頼もテキトーなこと言ってんじゃねえよ!」

宮寺に胡乱な瞳で見られて、俺は爆発した。

「宮寺――琉奏先生」

「はい?」

頼は不躾にじろじろ宮寺を見る。身長差、宮寺のが上。

「天才っていると思います?」

「いるよ。ってかここにもいんじゃ――」

「ああああ! 悪い手が滑ったー!」

ゴガンッ! 鈍い音で俺の教科書がぶっ飛んだ。あらぬ方向に。

「は、遙音……?」