「あれ、夏島?」

「げっ! 宮寺……」

友達といたところを宮寺に見つかった俺は、呻き声をあげて額を押さえた。

宮寺が来ると知って以来ガラにもなく隠れていたのに。

「なんだ、お前こっち来てたんだ。桜庭行くかと思ってた。神ぐ

「うおらっ! あ、わりーわりー、足が滑った」

宮寺の脇腹に中段蹴りが炸裂した。

俺といた友達三人が呆気にとられて、口半開きになった。

宮寺のネクタイ摑んで低くささやく。

「ここであいつの名前出すんじゃねえよ」

睨みつけると、宮寺はうなった。

「お前……本気で蹴んなよ。痛いって」

「遙音、宮寺先生と知り合いなのか?」

驚く友達に問われ、仕方なく肯いた。

ここまで話しておいて知り合いじゃありませんは通用しないだろう。

「あー、まあ。昔、面識ある」

「えーっ、すげーな。宮寺先生って遙音の前の藤城主席だろ?」

「らしーな」

投げやりに答える。

「あ、今は夏島なんだ」

宮寺は感心した風に言った。

『藤城主席』と言うのは号のようなものだ。勿論学年主席の意味も含むけど、内外にもその存在が示される場合に、『藤城主席』の名を冠することがある。

なので、毎年毎学年、その呼び方をされることはない。

俺は一応、宮寺以来の『藤城主席』らしい。

ちなみにその後を継ぐかと言われているのが頼だったりするので、色々複雑。