…………うん。

んーっと腕を天上に伸ばす。

「さーて、と。父さんのご飯作らないとー」

ここのところは、昼休みは遙音先輩が郵便屋さんをしてくれているから、明日のお弁当の下準備もしておこう。

頭を振り切ってハンガーにかかっているエプロンを外していると、携帯電話が鳴った。

「ん? はいはーい」

『咲桜、今いいか?』

「うわっ! は、はいっ!」

『……なんで悲鳴』

「すいません、タイミングがタイミングだったもんで!」

ディスプレイを確認せずに反射的に出てしまった。

落ちているときに大すきな流夜くんの声は刺激が強すぎた。

だ、大丈夫かな……このまま喋っても……。耳が爆発しないかな。

『在義さん帰ってるか?』

「ううん。まだだけど、今日は帰るってメッセ来てた」

『今からそっち行ってもいいか?』

「えっ……いいのっ? 嬉しいっ」

『あ、そう、か』

「うんっ! 待ってるねっ」

嬉々として電話を切る。やった! 流夜くんに逢える! 電話の向こうの流夜くんの声は照れているようだった。もうそういうとこ愛らしいんだからなー。

にへらとしてしまう。

「―――」

――世界がキライなのは、私もだったんだ。