「じゃ、これお礼に」

と降渡が一枚の紙を差し出した。何の礼だよ。

「お前に接触したいって、依頼された」

「俺? 今は表立って動いてないけど」

俺が存在を隠さずに警察に関わっていたのは学生時代だ。

勿論学校側にはおおっぴらには言っていなかったけど、今のように完全に影に徹してはいなかった。

だからむしろ、今の隠れた場所から動いている俺への接触を図るとは一体?

「琉奏から」

ばしっ。

勢いよく紙を引っ叩いた。

「おい! 拒絶の仕方が小学生だよ!」

折線がついてしまった紙を直しながら、降渡は背中を向けた俺に噛み付く。

「あいつが今藤城に出入りしてんのは知ってんだろ? 何でわざわざお前を介してくる」

「んー、学校のお前が偽モンだと思ってるとか?」

「………」

「そんな蔑んだ瞳、しないで」

少し悲しいよ。降渡ははらりと手を振った。

「わーってるよ。わざわざ俺を介してお前に接触した、証拠がほしいんだろ」

神宮流夜と会った、っていう証拠を、雲居降渡を通して残しておきたかった。

「……別に死ぬわけじゃあるまいし」

「死ぬ覚悟で俺んとこ来たんだろ」

「どんな特攻精神だよ」

「だってあいつはお前と関わるべき人間じゃねーもん。それこそ、咲桜ちゃん以上にお前への必然性がねえ」

「―――」

そうやって。

選択排他されるのだ。

人間の関係性。