「………」

「俺だって現れただけで嫌そうな顔されんの、さすがに傷付くんだけど」

「お前は面倒しか持ってこないだろ」

「咲桜ちゃんとのラブラブ時間確保してやっただけでもありがたく思えー」

「………」

咲桜を送り届けるまで、私事関係の連絡が一切こなかったの、やっぱお前の仕業かよ。知っていたけどよ。ありがとよ。

「お前も絆とそうしてたらいいじゃないか」

「………」

降渡が黙った。

「……素で紅くなんのやめてくんねえ? こっちが恥ずかしくなる」

「う……お、お前がいきなり言うからじゃねえか! 俺は絆のこと大事にすんの!」

「じゃあ今日の俺は咲桜のこと大事にしてねえってことか?」

「そうじゃねえけど! なんでりゅうは俺にはくそ意地悪ぃわけ? もっと優しくしてくれよそのうち泣き出すぞー」

「大丈夫。放置して絆に電話しといてやるから」

「ひでえよ扱い! つーかお前の電話に絆出んの? え、そこまで仲直りしたの?」

「高校を出てから個人的に連絡を取ったことは一度もない」

「そんなんで偉そうな発言かますな!」

ごちゃごちゃ五月蠅いので、さっさか一人で部屋に入って扉を閉めた。ガチャン。

ガチャ。

「そこまで無視すんなよー」

「……不法侵入を軽くするな」

秒間もなく扉は再び開いて、降渡が恨めしそうに顔をのぞかせた。仕方ないので放っておく。