「あ、あの! 違うの違うの! そうリアルに書きたいんじゃなくて、こう書けたらいいなーみたいなものだから! 重く受け取らないで大丈夫だから!」
「い――や」
ぎゅっと、せっかく開けた隙間が呆気なく閉じる。
「それって、誰の嫁さん?」
「うっ……」
「なあ、誰?」
「うう~」
私はただ、真赤になる。答えは知っているのにわざとな質問って悪質だ!
「で、でも! 私たち、……わたし、たち、」
私たち、という表現がなんだか恥ずかしくて、縮こまる。
「……………偽婚約のまま、だよ?」
マナさんが繋げた縁は、偽婚約で止まっている。
在義父さんには付き合うことの了承を得たけど、偽婚約をしたこと自体はどうとも動かしていなかった。
「ああ――そういえばそうだったな」
「そういえばって……」
流夜くんの中では大した問題ではなかったのかな?
「咲桜を嫁さんにすんの、当たり前みたいになってて忘れてた」
「………~~~っ」
あ、当たり前……ですか……。
ときどき爆弾を落とす頓珍漢め。
「でも――ちゃんとしておかないと駄目だよな」
そっと、左手を取られた。
「咲桜が高校を卒業したら、正式に婚約してほしい」