違う。認めたくないんじゃない。

「……ゆるしたくない……」

「……そうか」

ゆるしたくない。愛されている自分なんて。ゆるし方がわからない。

流夜くんの腕が私の背中に廻った。引き寄せられて、流夜の胸に額から突っ込んだ。

「りゅ――」

「俺、こうしてんのが一番すきかも」

「……私のおでこ強打するのが?」

「じゃなくて。……咲桜を真正面から抱きしめているときが、だよ」

「………、~~~~~」

「消えてしまいそうで怖いんだ。今まで誰にも持ったことがない感情だから、どうすればいいのかわからない。だから、俺が咲桜を愛することを、ゆるしてほしい」

「―――」

「咲桜にしか出来ないことだ。俺に愛されること、じゃなくて、俺が咲桜を愛することを、咲桜にゆるしてもらいたい」

「――――う、うあ」

それを最後に、完全に固まってしまった。

り、臨界点をぶっちぎりで越えた……。

全身が熱くなっている私だけど、流夜くんはまだ言い足りない顔をしている。

「咲桜」

顎に指をかけて、軽く上向かせられる。固まってるがゆえに真っ直ぐ見ている瞳が流夜くんとぶつかる。今から何を言われるかわかってる? そんな、悪戯っぽい笑みを見せる。

「愛してる。咲桜のこと、ずっと。だからこれからも、一番に咲桜を愛しているのは、俺でありたい」

「………っ」

驚きと恥ずかしさが混じって息を呑んだ。

「わ、」

やっと、細く声をあげた。

「私に、なにか、出来ることって、ある?」

「うん? 出来ることって?」

単語で区切った喋り方。頭が落ち着かなくて、声がうわずっている。