「―――――」

「俺は、非道い生まれをしているかもしれない。生きてることが嫌いだった。独りだけ残された自分が恨めしかった。世界も嫌いだった。でも、咲桜が生きている、咲桜がいるこの世界が、すきになれたよ。……咲桜のおかげで」

「………っ、なんで……っそんなこと言うのぉ……っ」

「本当のことだから」

「うぅ~っ」

誰かに認めてほしかった。

流夜くんは、最初に私の頑張りを認めて、頑張らないことをゆるしてくれた人だった。

だから、安心して傍にいられる人になった。傍にいたいと願う人に。

そして今度は、私の命を――

「咲桜がいなくちゃ、俺はこの世界が嫌いなままだった」

「……っ、」

「だから、俺が惚れた咲桜は、そのままでいいから。……そろそろ、自分の命をゆるしてやらないか?」

――ずっと出来なかったことだ。

自分で自分の命をゆるせなかった。認められなかった。排除されて然るべきとすら思っていた。

……そう思うことで、辛い生まれの自分を、どうにか保っていた。

引け目があることを認めて生きていなければ、すれ違う人にだって申し訳なかった。

ごめんなさい、私なんかがいて。でも、頑張るから、お願いだから、私をゆるしてください。

……そんな、底なし沼の思いに足を沈めたまま生きていた。

「そんなこと言われたって……どうしたらいいのか……」

わからないよ。

だってずっと、自分は謝りながら、ゆるしを乞いながら生きていく命だと思っていた。

「……咲桜。お前は愛されているよ」

ぎゅっと、手を握る力が強くなった。

「俺だけじゃなくて、在義さんだけじゃなくて、松生や日義や、お隣の怖い人とか、お前の命をありがたく思う人はたくさんいる。……お前の命を、大事にしたいって思ってる筆頭は俺だけど、そう思ってるのは俺だけじゃない。……もう、結構わかってんだろ? 認めたくない?」

すいっと、流夜くんの指が頬の涙を掬う。