あ、変わった。青だよ、と伝えると、顔をあげて、すぐ左手側にあった公園の駐車場に車を入れた。

エンジンを切る。

「あの……ごめんね? でも本当に流夜くんのことは何も言われてないから、ばれてはないと

「そこじゃない」

きっぱり否定されて、困った。えと……じゃあなんだ?

唯一思案していた答えを否定されてあわあわしている私の肩を、流夜くんが摑んだ。

勢いで顔が流夜くんの方に向く。カチリと音がしてシートベルトが外された。

流夜くんの肩を摑んでいない方、右の手が私の頬に伸びて、思わず目を瞑った。

「………っ」

しかしいつもの大きな手は触れず、変わりに歯噛みする微かな音がした。

そろりと瞼を持ち上げると、流夜くんは何かをこらえるような顔でこちらをじっと見ていた。

「りゅ、やくん……?」

何かを思い詰めている様子。

「あの……」

「すまない。咲桜は本当に考慮すべきことを考えてくれているのに……」

「え? 怒ってるんじゃないの?」

「怒ってるよ。でもそれは宮寺に対して」

「い、いや、宮寺先生は父さんのこと話しただけだって。本当に」

「わかってるよ。学生時代から、俺らと同じように、あいつも在義さんを慕ってるって。だから咲桜とも話したくなったって。わかってんだけど――でも、それ以前に咲桜は俺の女だろ? 人のもんにコナかけやがってあの野郎……!」

怒っていた。――怒って、いた? 私に、ではなく、宮寺先生に?

流夜くんの言い分が上手く理解出来ずにいると、流夜くんは細く息を吐いた。

「わかってる。講師に来てる奴に呼ばれて、上手い逃げ方なんてそうないよな。しかも周りに人がいて、止められたりしなかったら断りにくいよな。だから俺が怒ってんのは宮寺に対して。学内で堂々咲桜と二人っきりとかふざけんなあのボケ」

「………」

それは、もしかして、宮寺先生を羨ましいとか、思ってくれた?