+
流夜くんに、宮寺先生からは在義父さんの話しかされなかったから大丈夫、とメッセージを送った。
流夜くんからの返事は遅いときもあるから、特に気にせず帰路につくことにした。
さっきまで旧校舎にいたからと言って、今もそこにいるとは限らない。
職員室なんかにいたら迂闊に開けられもしないだろう。
結局一人で帰ることになってしまった。
片田舎の道を歩いていると、前方に見覚えのある車が片寄して止まっていた。
幸い、車幅は十分にある道だから行き交いに問題はないけど……。
どうしよう、これは絡んだ方がいいのか? ……絡んでいかなくても絡んでくるんだろうなあ、と予測はつく。
ちょっと歩くスピードを緩めて、車の中を窺うように近づいた。
案の定、窓が開いて中にいたのは『流夜くん』だった。
「……こんばんは」
「乗れ」
絡まれた。
「いいんですか? 今日は気を付けないとでは」
敬語で話してみる。まさか誰かに――宮寺先生以外の人だって――聞かれていた場合の逃げ道だ。
「いい。話があるから、乗れ」
「………」
怒っている。……メッセージを見ているのだろうけど、それで余計怒ったか。うーあー、と心の中は必死にうなる。
逃げ場なく助手席に座った。流夜くんは黙って車を発進させる。
無言の車内。
流夜くんと一緒にいて――私事をしていないとき――言葉がないのは珍しい。
いつだって流夜くんは、仕事が立て込んでいるときだって、暇を見つけては構ってくれた。
……そんな時間を、失いたくない。
「………」
って! てかてか! 頭沸く! 心臓沸く! ちょ、心臓音聞こえてない⁉



