「気を付けて帰ってね。あと二回はここに来るから、その間はよろしく」

「はい。先生も」

宮寺先生は最後まで笑顔で、手を振って見送ってくれた。

この人も、教師になっていたらいい先生だったろうな、と思いながら昇降口に向かう。

途中、癖で携帯電話を確認する。

在義父さんの仕事柄急な用事は多いから、着信にすぐに気づけない校内ではこまめにチェックしていた。

あれ、笑満かな?

慌てて開くと、笑満からメッセージが入っていた。

『宮寺先生に呼ばれたこと、遙音くんと一緒に流夜くんに伝えておいたから
危ないことなかった?
終わったら返事ちょうだいね?』

「………」

ソッコー流夜くんに筒抜けだった! いや、知らせないで心配かけさせてしまうより……いい、のか?

「と、取りあえず電話しなきゃ」

さっさか玄関を出て、笑満に電話をかける。

どこにいるかわからないけど、急がないと怒られる。

『あ! 咲桜咲桜! 大丈夫? なにかあった?』

コール一回も終わる前に笑満の大声が飛び込んできた。

「あ、うん。なんか父さんと知り合いだったらしくて、それで呼ばれたんだって。ほら、父さんの仕事、クラスとかにばれないように気を遣ってくれたみたい」

『えっ、そうなのっ?』

『あー、宮寺っぽいな』

遙音先輩の声も聞こえて来た。

「笑満、どこにいる? もう帰ってる?」

『うん。流夜くんに話したら、わかったから帰れって言われて。残るって言ったんだけど、面倒にならないように、ほら、あたしは遙音くんと帰ってるって流れにしたし』

「だったね。わかった、ありがとう。メッセージ入れておいてみるよ」

『そうして。でも本当に――なにか危ないことはなかったの?』

「うん。本当に父さんの話しかされなかった」

『そっか。……でも、在義パパと知り合いってことはさ、――』