「……承知している」
先生は重く肯いた。
肯定、か……。
「……じゃー。明日っから顧問お願いしまーす」
間延びした声を残して教室を出た。
そのまま階下へ向かうと、ホールに三人がいた。あ、帰ってなかったんだ。
「頼! 怪我はしてない⁉」
開口一番、咲桜が泡喰って飛びついて来た。
「怪我? ないけど」
咲桜の心配のしどころが、今は俺だけではないことはちょっとさびしーね。
……けど、囚われてもしょーもない。
頭を刹那で切り替える。
「でも先生の怪我は大きいかもねー」
「流夜くんに怪我⁉ お前が殴ったの⁉」
顔面蒼白になる咲桜。さっきより顔色は悪い。
ぴらっと懐から写真を出した。咲桜は、今度こそ血の気が引いたようだ。
「お――お前それ見せたのかバカ―!」
「あははー。見せちったー」
ひょいひょいっと身軽く咲桜から逃げる。
咲桜は頭に血がのぼってしまったようで、猛然とこちらに突き進む。
笑満とオトはそれを見てため息をつきながら、旧校舎から離れて帰り道に歩き出した。
うーん、これも撮りたいなあ……。
夕焼け。
あの日に独りだった笑満は、今、友達と、ずっとすきだった人を恋人に、隣を歩いている。
……おめでとう、笑満。