「撮った写真は総て咲桜によって管理されていました。咲桜がダメだというものはネガを燃やされました」

「……結構過激だな」

「んで、そのときの写真も燃やされました。俺としては気に入ってたんですけど」

「………」

「見ます? 一枚だけ焼いたヤツあんですよ。今なら特別にタダでいいですよ?」

「………」

先生は黙って手を出して来た。苦笑を隠せず懐を探った。

余裕ばっかだと思ったら、咲桜のことになると急に子供っぽいところも見せる。

この人いじんの面白―。くっそむかつくけどさ。

「咲桜が手を引いた場面です。お前も助けろって、まあガチで殴られた思い出の一発目ですね」

「……――手を引いたって物理的な意味だったのか⁉」

写真を見た先生は瞠目した。

写っているのは、夕陽の所為でシルエットだけ。

ジャングルジムの高い位置から手を伸ばしている子供と、その手を握られて宙に浮いている子供の写真だった。

「物理的意味です。勿論心的意味もあるでしょうけど――」

……笑満が咲桜に、『手を引かれた』、その瞬間。

俺も咲桜も、このときが笑満とは初対面だ。

だから、どうして笑満が宙に身体を放ったのか、とか、全然知らなかった。

咲桜は――もしかしたら本能的に危険を察知していたのかもしれない、ってくらいたまたまそこにいて、笑満の手を摑んだ。

笑満は転校前のことは一切話さなかった。オトの存在も、事件のことも。

警察官の娘である咲桜とも、すんなり友達になった。

『転校前の学校で、友達関係でちょっと』、とだけ話したことがあった。

それが原因で人間不信っぽくなったこともあるんだ、と。

俺たちが出逢った笑満は、よく笑っていた。

俺しか友達がいなかった咲桜と友達になって――オマケで同級生と距離が出来てしまっても気にしないで――、咲桜と一緒に色々俺のストッパーになろうと画策してくれたりしていた。

けれど別に笑満は、『咲桜に助けられた』なんて思っていない。

それだけは、俺だけが言えることだ。

はっきりと。