「なんか訊きづらいからわざわざお前を経由しているんだ。遙音が危惧していたんだが、本当に友情だけなのかって」
「………」
ああ……そのことか……。この人ってそういうこと気にするんだ。原因はオトみたいだけど。
「どう、なんだ?」
先生は怖々と訊いてくる。さっきまでは余裕しかなかったその態度に、面白いような悔しいような気持ちになった。
「友情じゃなかったら、あんた咲桜から手ぇ引くんですか?」
「まさか。俺に向けさせるだけだ」
その答えに息を詰まらせたのは俺の方だった。部活の件とか嵌めた側として、居心地悪く前髪を掻く。
「……友情ですよ。周りからどんな風に見えてんのかは、まあ本人たちの自覚は、周囲の評価からはかなり低い位置にあるでしょうけど。……あいつらがあそこまで仲いいの、本当に笑満の命を咲桜が繋ぎ止めたからなんですよ」
「命?」
「そ」
軽く肯いて、勝手に置いてあった椅子に座った。
「今は結構撤去されちゃってますけど、まだあった頃の話です。公園の遊具」
「………」
「ジャングルジム、だったかな? 鉄の棒で四角形の形に建てたあれです。夕暮れの公園で、笑満はそれに登ってました。笑満がうちの学校に転入する前日の話です――」
「………」
「笑満がそれまでに何がどうあったとか、そこは俺の興味範囲じゃないんで知りませんけど。でも、友人関係、人間関係で傷ついていたのはわかりました。俺は咲桜の写真をただ撮りたくて、その日もこっそり木の枝を持って、夕陽に黄昏る咲桜の写真を撮っていました」
「……それ簡単に盗撮って言わないか?」