「………」
「らーい」
「……やだ」
「やだってお前……」
「だってふつーにムカつくじゃねえか! 咲桜は俺の一番の友達だったんだよ! なんか知んねーとこから現れてかっさらってしかも教師ですってはいふざけんな!」
「ふざけちゃいない」
「あー! 神宮は今何も言うな! 悪化する!」
頼が吠えて流夜くんはさらっとかわして先輩が頭を抱えて叫んだ。
カオス。
私は、今日何度目になるか、笑満と顔を見合わせた。居場所作りに流夜くんはわかってて頼のは嫉妬?
混沌。
笑満が大きく息を吸い込んだ。
「なんかわかんないけど――咲桜! 帰ろう! 遙音くんも!」
頼が手にしていた創部届を笑満が奪って、その勢いで私の腕と先輩の手を摑む。
「流夜くん! 一応頼は生徒なんだから、その辺りはわきまえてくださいよ?」
「問題ない。迷惑かけてすまない」
「ならいいです。頼、ケジメ、なんでしょ?」
笑満に言われて、頼ははっとしたように瞬いた。
「じゃーまた明日! さー帰りましょー」
笑満が私たちの腕をぐいぐい引っ張って教室を出た。
「俺は引っ張らなくても素直に帰るよ?」
「はっ! ご、ごめんなさいっ」
「謝らないでいいから手繋いでていい? どっちかっつーとそっちの手は放してもらいたいかな」
「でも捕まえてないと咲桜が戻っちゃう」
「咲桜もそこまでわからない奴じゃないだろ。咲桜。――男同士の話だって、理解してあげろよ?」