「まあお前が入りたくなきゃそれでいんだが。特に他意はない」

簡単に答えられて、先輩の眉が動いた。

「なんか知んねーけど入るわ。したら堂々一年の教室行けるもんな?」

「来てどうすんですか?」

私は疑問符を浮かべる。今までだって堂々と一年の教室に来ていたような気がするけど……。

「決まってんだろ。笑満ちゃんに色目使ったら容赦しねーって布告だよ」

「………」

「なっ」

私はなんとなく黙って、笑満が顔を更に真赤にさせるのを見守った。ここもなかなかに仲がいいようで何より。

「はい、名前書いて。ついでに副部長とかやって」

「お前はマイペース過ぎる」

頼にペンを渡されて、文句を言いつつも先輩は流夜くんの机で素早く署名した。流れで役職押し付けられた。

「さすがにすぐに認可はされないだろうから、また明日来ます。それまで咲桜はお預けでーす」

と、わざとらしく言って頼は出て行こうとした。また流夜くんが頼に怒らないか不安に思ったけど、そんな反応はなかった。代わりに、

「日義。お前は少し残れ。話がある。咲桜たちは帰っていい」

「「は?」」

私と頼の声が重なった。

なんでその指名? 戸惑う私たちに、先輩だけがわかった顔をしていた。

そのまま頼にささやく。距離的に、私にも聞こえた。

「頼。ここはお前、残った方がいい。届けは明日にして」

「は? なんで」

「咲桜と逢わせやすいって恩作ったって無駄だ。お前の『居場所作り』はあいつにはばれてる。わからない奴じゃないから、話聞いてやれ」