「そうだなー。ここの教師、大体日義を敬遠してるよな」
和やかだった。根拠のない勝利宣言をされているのに、流夜くんはのほほんとしていた。大物か。
「じゃー先生、引き受けてくれます? つーか引き受けますよね? わざわざ咲桜と接触する理由作ってやったんだから」
……頼、ちょっとイラッとしていたみたいだ。流夜くんのあまり効いていない反応に。
「構わない。もし不受理になったらまた来い。俺からも意見書作ってやるから」
「それはどうも。んじゃ」
「一ついいか? 遙音はその部にいるのか?」
「―――」
笑満がびくりと肩を跳ねさせた。流夜くんは二人が付き合い始めたことを知っている。そういえば頼には言ってなかった……。
「今んとこ俺らだけですけど。オトも入れたいんですか?」
「入れたいというか、いた方がこちらとしては色々都合がいい。もしお前たちが嫌ではなかったら誘ってみてくれないか? そこにいるから」
と、流夜くんは廊下に通じる扉を――私たちが入って来た方を指さした。
「遙音くん?」
笑満が扉を開けると、壁に背中をつけて顔を引きつらせている遙音先輩がいた。
「いつからいたの?」
「あー、部長は咲桜にしときますんで、のあたり? 入っていいのかわかんなくて」
「ごめんねっ、すぐ気づかなくてっ」
笑満が顔を蒼くさせると、先輩は「気にしないで」と軽く笑った。
「オトも入る? 副部長とかやる?」
「なんでいきなり役職ついてんだよ。つーか、何? なんの部活やるわけ?」
入って来た先輩が、頼が手にしている紙をひったくった。
そこには三人の名前と、空白の顧問の欄。
そして、『色彩研究部』と書かれている。
「……色彩けんきゅうぶ?」
先輩の声は胡乱に響く。



