私は直接接触したことはないからどこまでとはわからないけど――流夜くんが警戒しているのは、私にも伝染する。

「んで、それなりに出来てしまう奴だった。言っても、ただの勉強が出来るタイプで終わるかもしれないけど――このまま、あの人に憧れるだけなら」

そこで頼の『評価』は終わるようだった。

流夜くんについて語って、その『敵』で最終的に評価して。

私は胡乱に眉を寄せる。降渡さんや吹雪さんまで調べ上げていたか……。

「……頼、どこまで調べたの? お前の情報網ってどうなってるの」

「それなりに使えるモノは全部使って。そしたら出てくる出てくる。面白―くらいだよ、あの人らの周りは」

くすくすと笑いを噛み殺す頼。

……普段からその百分の一でも活動してくれないかな。頼むよ。

……頼は別種の楽しみを見つけてしまったようだ。三人に喧嘩売りにいかないといいけど。

「……流夜くんって天才なの? 頭いいのはわかるけど――」

「うん。傍目には凡人装ってるけどな。装ってる時点で天才確定なんだよ」

……頼がこんな言い方をするのは――出来るのは、頼も同種だからじゃないかな。

以前流夜くんも言っていた。流夜くんは、頼のことを『天才』タイプ、遙音先輩を『秀才』タイプと区別していた。

私にとって、頼の頭の中は深淵だ。息も出来ない水の奥底。

「まあ、その辺りは感覚の問題になんだけど。――っと、ここだっけ?」

頼はいつかぶち開けたドアの前を通り過ぎようとして、足を停めた。

私が肯くと、「お邪魔しまーす」と軽快にドアを開けた。

中にいた流夜くんはタブレット端末で何かを見ていた。

推測するに、海外の新聞とか論文だろう。色んな世界と繋がっている人だから。