撫子は雪うさぎであった私に優しく微笑みかけ、そしてそんな彼女が私の傍にいるのが幸せでならなかった。
 彼女は知らない、自分の秘密を──


 『雪姫』と呼ばれる雪の神の加護を持つ少女は、雪に願いを込めるとその雪に命を宿すことができる。
 私は彼女の『母に会いたい』という気持ちから生まれた雪の式神。
 だが、私は彼女の願いを叶えてあげられない。
 彼女の母はすでに亡くなっており、そんな願いを叶えられない式神はやがて命尽きる。

 それは数十年後かもしれない、数年後かもしれない。
 いや、明日かもしれない。