「撫子の膝は温かいね」
「ふふ、あの日蒼也様が助けてくださったおかげです」
「そういえば、どうして私を助けてくださったのですか?」
「撫子が好きだからだよ」
「でも、私はあなたのことを知らない」
「……一年前の雪の日にあなたは私に命を与えてくれた」
「あ……」

 蒼也様の赤い目を見て、私は一年前のあの日の記憶を思い出したのです。


 ──雪の降っていた一年前。

 私は寒くて凍えそうな手をさすりながらも、納屋の窓に積もった雪を触っていました。
 形を作り、納屋の窓から届くところに生えていた赤い実と葉を取って、その雪にくっつけました。

「できた」

 出来上がった雪うさぎは数日でなくなったけれど、その雪うさぎと目の前にいる蒼也様が重なります。


「あの時の雪うさぎさんですか?」
「はい、やっと会えた。あなたの手からあなたの優しさがずっと伝わっていた」
「どうして人間に……」
「雪の神に命を授けられたのです。だからあなたと二人でこうして過ごせるようになった」
「それは雪の神様に感謝しなければなりませんね」

 私はその晩雪の神様に感謝の気持ちを伝えました──