私を拾ってくださった日から毎日「撫子は優しいね」と言いながら髪を梳いてくれます。
 自分でしますと言ってもいつも湯あみ後の髪を梳いてくださるのです。

 ある日、月を見ながら旦那様である蒼也様は私にこう言いました。

「撫子、月にうさぎはいると思うかい?」
「え?」
「古来より月にはうさぎがいると信じられているが、誰もみたことはない。だから誰も知らないんだ」
「そうですね、うさぎさんがお月様にいるのか私も知りたくなりました」
「ふふ、いつか私が調べてきてあげよう」

 そう言いながらお酒を一口飲んで私の膝に頭を乗せてくるのです。