私は元々妾の子だからとお父様からもお母様からも疎まれて過ごしてきました。
 私を産んでくれたお母様譲りの亜麻の髪と目は、『災厄のもと』だと言って蔑まれました。
 それでも私はお母様から言われた言葉があったのです。

「この髪と目の色はね、幸せを呼ぶ色なのよ。だからいつか必ず撫子(なでしこ)を迎えに来てくれるひとがいるから」

 その言葉をふと思い出して私の頬を涙が流れる。

「どうしてあなた様は私のことを見つけてくださったのですか?」
「気づきませんか? あなたは昔私を助けてくれたのです。だからあなたを助けるために戻ってまいりました」

 私はこんな麗しい方に出会ったことは一度もありません。
 それなのにどうしてでしょうか、この懐かしい感じは。

 そうして戸惑いの顔を浮かべている私に、彼はこう言いました。

「撫子、私のお嫁さんになってくれますか?」

 納屋から助け出されて、寒く雪が降るその日に私は彼の妻となりました──