気がつけば、俺たち二人は魔王城についていた。
他の幹部連中とかもいたけど、毒のゲロを使い、ワンパンで倒してしまったから。
その他にも、技を1つ身に着けた。
火炎草というものをとある村で買い、それを食べたことで俺は『しゃくねつのゲロ』という技を会得。
頭に巨大な二本の角。紫色の屈強な肉体。身長は3メートルほど。
髑髏のマントを羽織って、玉座の前で偉そうに座っているのが、魔王らしい。
魔王が、俺とアンジーを見て咆哮をあげる。
「グルアアア! 貴様が勇者か!」
「いや、違うよ」
一応否定しておく。
だが、天然で正義感の強いアンジーがすぐに叫ぶ。
「このロクロウ様こそ、あなたを倒す勇者様よ!」
「ほほう。とうとう、我に仇名すバカな人間が来たか」
勝手に話を進められた。
「勇者ロクロウ。貴様、今まで数々のモンスターを倒し、我の最強四天王まで打ち破ったそうだな。……認めてやろう。貴様の力を。どうだ、我の配下にならないか? さすれば、お前の望みはなんでも叶えてやるぞ?」
以外な展開に俺は、ちょっと驚いた。
「え、マジで?」
「ああ、1つだけならな」
俺は即座に答えた。
「それなら身体をくれ! くれたら配下になってやってもいいぞ」
身体さえあれば、アンジーとムフフできるし、他にもハーレム城を作れるからな。
「ほほう、そういうことか……。ならば、我が城に“魔法の鎧”という秘宝がある。貴様の首に、それをくっつけたら、自由に動けるだろうなぁ」
「なんだってぇ!? マジ? 欲しい! やるよ、魔王軍!」
俺と魔王で商談が成立しようとしていたが、アンジーが横から入ってくる。
「なりません、ロクロウ様! こんな邪悪な者の言葉に耳を貸しては!」
「いや、でも……身体が」
言いかけた瞬間。
何を思ったのか、アンジーは腰にかけていたバッグから、馬糞を取り出した。
「ロクロウ様、これを口にしてください!」
アンジーは異臭を放つ馬の糞を、俺の口に放り込み、頭を上下左右にブンブンと振り回す。
「ぐぉぉぉ……」
口の中に広がる糞の悪臭と、視界が揺れに揺れて、最悪の状態だ。
「うおおぇぇぇぇぇ!!!」
今までに見たこともないぐらいの大量のゲロを口から吐き出す。
しゃくねつのゲロが魔王を襲う。
「ぐあああ!」
最強で極悪な魔王でさえ、俺のゲロの前では一撃だった。
「やりましたわ! これで世界は平和になりましたわ、ロクロウ様! お慕い申しております!」
そう言ってアンジーは、ふくよかな胸の谷間に、俺の顔を埋める。
当の俺と言えば、放心状態。
せっかく身体を手に入れるチャンスだったのに。
※
魔王が座っていた玉座の後ろに、小さな隠し扉を見つけた。
アンジーに開いてもらい、二人して部屋の中に入ると、そこには膨大な宝石や金が山のように並べられていた。
隠し財産ってやつか。
その部屋の中央に、何やら煌びやかな鎧が一体、飾られていた。
「あ、これか。魔王が言っていた。魔法の鎧って!」
俺は早速アンジーに首を鎧にくっつけてもらう。
すると、あら不思議。
鎧が自分の肉体のように、自然と動かせる。
「おお! これで自分で動けるな!」
「本当ですわね! ロクロウ様と一緒に手を繋げますわ!」
抱きしめ合って、喜びを分かち合う俺とアンジー。
彼女の豊満なバストがプニプニと心地よい。
しかし、ここであることに気がつく。
あくまでも鎧だ。
股間に“そういう装備”は備えられていない。
「クソがっ!」
確かに、自由に動けるし、これで無双できるし、アンジーとも一緒に暮らせる。
だけど、なにもエチエチな展開がないじゃないか!
「どうされましたの? ロクロウ様?」
天然なアンジーには、俺の目論みに気づいていない。
部屋を出ようとした瞬間、一人の少女が現れた。
小さな角を2つ頭から生やしたロリッ娘。
褐色の肌に、ツルペタのまな板の魔人。
どうやら、魔王の忘れ形見のようだ。
「あ、あの……私も連れて行ってくれない?」
父親である魔王も、部下の魔王軍も全滅させたしな。
身寄りがないのだろう。
よく見れば、顔もカワイイ。
「いいけど、俺はお前の仇だぞ?」
「私もオヤジ嫌いだったから別にいい……」
「そっか。なら着いてこい」
「いいの?」
アンジーが俺の答えに激怒する。
「なりません、ロクロウ様! 相手は魔王の娘ですよ?」
「しかしだな。もう魔王軍はこいつ以外いないんだ。敵意もないようだし、一人ぼっちは可哀そうだろ?」
「ロクロウ様はお優しいですわね……。ロクロウ様が言う事でしたら、仕方ありませんわ」
渋々、アンジーは話を吞んでくれた。
城を出る際、魔王の娘こと、チビルが恥ずかしそうにこちらをチラチラと見て、こう言った。
「あのさ、ロクロウって股間が欲しいの?」
「うん……まあな」
「それなら西の国に幻のアーティファクト、“魔法の股間”っていうのがあるって聞いたよ。それを鎧にくっつけたら、その……おしっことか、色々使えるらしいよ」
どうやら、チビルも俺に気があるようだ。
「マジか! 大マジなのか!?」
俺は小さなチビルの身体を激しく揺らす。
「ほ、本当だよ……オヤジが話してたから」
頬を赤くして、照れている。
話し方からして、彼女はウソをついていない。
噂でも信じる価値はある。
俺は決心した。
「アンジー、王国への凱旋はまだだ!」
「ほえ?」
天然なアンジーは分かっていない。
「俺たちは今から、魔法の股間を手に入れるため、西の国へと出陣だ!」
「ほえぇ?」
チビルも俺に協力的だ。
「ロクロウのためなら、私も頑張る!」
身体を手に入れた俺は、魔王城で手に入れた大剣『ダークキャリバー』を担ぎ、最強勇者となった。
もちろん、ゲロスキルが今の所、最強スキルだが。
天然なアンジーは、回復魔法を使うヒーラー。
チビルは魔族の腕力を活かした、斧をぶん回すロリッ娘戦士。
こうして、俺たち三人の股間を探す度は、始まったのであった。
のちに最強の勇者たちとして、語られる三人。
『伝説の股間パーティ』の誕生であった。
了