自由……
自由、とは。
自由?


「もう殴られることもないし。ババアの入れた飲みもんも飲まなくていい。佳乃が犠牲になることは無い」


殴られる事も……?
薬も飲まなくていい……?
私が犠牲になることは──。


「それでも、まあ、壱成さんの関係は言われるかもしれない。族の頭をしてる人だから。──そういう、なんつーの、バカしてる人間をあいつらは嫌うから」

「お兄ちゃん……」

「だからこれからは佳乃次第」

「……わたし?」

「壱成さんがどんな人か、あいつらに教えてやれ」


どんな人か……。
私のことを考えてくれる優しい人だと?


「わたし……、壱成さんと会ってもいいの?」

「それも、親の許可が得たらって話な」

「好きでもいいの……?」

「いいよ、佳乃は自由なんだから」

「──……自由……」

「そうだよ」

「……」

「なあ、」

「……?」

「好きか?壱成さんのこと」


好き。
好きだよ。
でも、もう、関わらないでって、言ってしまったのに。


「私もう、壱成さんを拒絶したの……」

「拒絶?」

「何もしないでって。会うのは1年後って…」

「……ああ」

「それでも、私から会いに行っていいの?」

「いいんじゃねぇの?」

「でも、嘘をついたことになる……」

「あの人、お前の嘘に怒るか?」


怒らない……。
壱成さんは私に怒ったことなんてない。
首を横にふれば、お兄ちゃんの笑った気配がした。


「頑張れ、応援してる」

「……お兄ちゃん」

「ん?」

「……ありがとう……」


お兄ちゃんはまた笑うと、私の頭を撫でた。


「けど、暫くは様子見。動画がある限りは大丈夫だとは思うけど」

「うん」

「つか、礼なら壱成さんに言ってくれ」

「……壱成さん?」

「お前を守ってくれたのは壱成さんだろ?」