それでももう会うことはできないと壱成さん伝えなければならないと思ったから。──もうバレたと分かっているならと、月曜日の朝、早くに駅に行き壱成さんを待った。学校までのギリギリの時間まで待ったけど、壱成さんに会うことはできなかった。





────お腹が痛い。
火曜日の朝、その痛さで目を冷めた。
まだ明け方の4時半頃だった。
きゅるきゅると鳴ったと思えば、鳴り終わったと同時に締め付けられるような痛みが走る。痛みでトイレの中で朦朧とするのが分かった。
痛みで意識を失いそうになったけど、意識を失う訳にはいかなから。
痛みが収まり、トイレから出るともう朝の7時半を過ぎていた。

これもバレた。
朝早く行っていたのは、壱成さんに会うためだと。


「大丈夫か?今日は休んだ方がいいんじゃないか?」


仕事へ行く前にお父さんが私の顔色を見てそう言ってきて。きっと私の顔は蒼白だ……。


「体が弱いのに、電話して夜中まで起きてるからだ」

「うん、ごめんなさい……」


夜中までしてない……。
それにもう壱成さんとは連絡とっていない。


「明細書を見たが向こうから電話をしてきて、佳乃はずっと起きて無理をしていたんだろう?佳乃は断れない性格だからな」


お腹が痛い……。


「今後関わってくるようなら、お父さんに言いなさい。警察に相談するから」

「……うん、」

「いい子だな佳乃は」


喉が乾いた。
何か飲みたい。
ふらふらする。
お腹が痛い。


ふらふらする体でリビングに行けば、お母さんがいて。お母さんももうすぐ仕事へ行くみたいで。


「佳乃、ここ、白湯を置いとくからね」

「うん、ありがとう……」


キッチンカウンターに置かれた白湯を見て、それをゆっくりゆっくり、喉の奥に流し込んだ。
お腹の痛みは良くなってきたのものの、体調が良くないのか、ふらふらしてその日は学校へ行くことができなかった。


お昼頃、遊びに行っていたらしいお兄ちゃんが帰ってきた。
リビングのソファに座り込んでいる私を見て、近づいてくるお兄ちゃんは「お前、学校は?」と私の顔を覗き込んでくる。
だけど私の顔色を見て焦る顔付きになるお兄ちゃんは、「……救急車……」と、スマホを取り出す。


「やめて……」

「佳乃」

「大丈夫だから、また貧血だから」

「……なんか食え、」

「でも、」

「アイツら帰ってくんの、まだ先だろ。俺が食ったことにするから」

「……」

「……何が原因?」

「…男の人と、電話をしているのがバレた」

「……この前言ってた3年?」


その言葉に頷く。


「ごめんな」

「……」

「もう少し、あと1年、我慢してくれ……」

「…伝えて欲しい」

「何を?」

「もう会えないって」

「……」

「…ごめんね、どの壱成さんか分からないのに……」

「……なんか、作ってくる」


お兄ちゃんは立ち上がると、キッチンの方に向かい冷蔵庫を開けた。
何かを取りだしたお兄ちゃんは、それを置き。
キッチンカウンターに置いたままのマグカップに気づき手に取った。
まだマグカップに3分の1ほど残っている白湯を見て、すごく怒った表情をしたお兄ちゃんはそれを流して捨てた。


「クソ野郎ども……」