通話の切れたスマホの画面を見ながら、優しい壱成さんの事だ、私が勉強をしているから早く切らないとと思ったに違いない…。
そう思うと申し訳なくて。こんなのお礼の電話とは言えない。勉強をしてるなんて言わなければよかったと後悔した。
「────今日も早いの?」
次の日の朝、朝早く起きた私にお母さんが尋ねてくる。その声のトーンがいつもより違和感があって、息を飲みそうになった。
疑われてる…?
「…うん、そう。勉強するから」
「えらいなあ佳乃はアイツと違って。頑張るんだぞ」
だけど、疑ってないらしいお父さんがそう言ったから、私は家を早く出ることが出来た。
応援してくれるお父さんに罪悪感が増えていく。
壱成さんと朝に会えるのは、これで最後になるかもしれない。そう思うと本当に悲しく。
昨日とは違い少し足取りが遅くなるものの、約束の10分前には到着しようとしていた。
駅が見えてきた時、すぐに壱成さんがいるのが分かった。壱成さんは何時にここへ来ているのか。
私を見つけた壱成さんは私に近づいてくる。
「おはよう」と、笑いかけてくる壱成さん。壱成さんは今日も早く私を見つけた。
「おはようございます」
「昨日は悪かった」
「え?」
「勉強の邪魔をするつもりは無かった」
やっぱり、すぐに電話を切った理由は…。
私はもう少し電話をしたかった。
「手紙が」
「うん?」
「手紙が入ってます、受け取ってくれますか?」
壱成さんは少しだけ苦笑いをしたけど、すぐに顔を和らげた。菓子折が入った紙袋を渡そうとすれば、壱成さんは「ありがとう」とそれを受け取ってくれて。
壱成さんは手紙がよほど嬉しいらしい。
「勉強は、いつも、3時間ほどしています」
「うん」
「だから、10分、15分は、それほど私にとって忙しい時間ではなくて」
「うん」
「私と、10分ほどの電話は難しいですか?」
「そんなことない。昨日は勉強中だったから本当に申し訳ないと思ったんだ」
「気にしないでください」
「…うん、分かった」
「すみません…」
「明日も、」
「え?」
「明日の朝も、会えるか?」
明日の朝?
「敬語が無くなるぐらい、会えたらなって思ってる」
壱成さんの言葉に、私はすぐに返事をすることが出来なかった。
自分勝手と思われるだろうか?
あんなにも私から「会いたい」「会いたい」と言っておきながら、壱成さんから「会いたい」と言われれば返事ができないなんて。
それでもお母さんに疑われているから、これ以上朝に会うと、もう朝も出て来れないかもしれない。
勉強しているのが嘘だと気づかれた時、お父さんに何を言われるか。
朝はもうダメ……。
だから。
その日の夜、壱成さんに正直に話すことにした。
『土曜?』
「…はい、あの、朝が早く出れそうになく」
『土曜は大丈夫なのか?』
「はい、いつも家で勉強していますが、その日は図書館に行くと言って出ますので…」
『それは親に誤魔化して家を出るって言うことか?』
「…そ、う、なります、でも、もう朝が難しくて、これしか…壱成さんに会うことが出来ません。ごめんなさい」
嘘をつく私を、嫌な女だと思うだろうか?
でも壱成さんに嘘をつくのも嫌だ…。
けれどもこうしないと壱成さんに会うことが出来ない。
『…じゃあ、図書館で会おう』
「え?」
『そうすれば、誤魔化したことにはならないから』
そう思うと申し訳なくて。こんなのお礼の電話とは言えない。勉強をしてるなんて言わなければよかったと後悔した。
「────今日も早いの?」
次の日の朝、朝早く起きた私にお母さんが尋ねてくる。その声のトーンがいつもより違和感があって、息を飲みそうになった。
疑われてる…?
「…うん、そう。勉強するから」
「えらいなあ佳乃はアイツと違って。頑張るんだぞ」
だけど、疑ってないらしいお父さんがそう言ったから、私は家を早く出ることが出来た。
応援してくれるお父さんに罪悪感が増えていく。
壱成さんと朝に会えるのは、これで最後になるかもしれない。そう思うと本当に悲しく。
昨日とは違い少し足取りが遅くなるものの、約束の10分前には到着しようとしていた。
駅が見えてきた時、すぐに壱成さんがいるのが分かった。壱成さんは何時にここへ来ているのか。
私を見つけた壱成さんは私に近づいてくる。
「おはよう」と、笑いかけてくる壱成さん。壱成さんは今日も早く私を見つけた。
「おはようございます」
「昨日は悪かった」
「え?」
「勉強の邪魔をするつもりは無かった」
やっぱり、すぐに電話を切った理由は…。
私はもう少し電話をしたかった。
「手紙が」
「うん?」
「手紙が入ってます、受け取ってくれますか?」
壱成さんは少しだけ苦笑いをしたけど、すぐに顔を和らげた。菓子折が入った紙袋を渡そうとすれば、壱成さんは「ありがとう」とそれを受け取ってくれて。
壱成さんは手紙がよほど嬉しいらしい。
「勉強は、いつも、3時間ほどしています」
「うん」
「だから、10分、15分は、それほど私にとって忙しい時間ではなくて」
「うん」
「私と、10分ほどの電話は難しいですか?」
「そんなことない。昨日は勉強中だったから本当に申し訳ないと思ったんだ」
「気にしないでください」
「…うん、分かった」
「すみません…」
「明日も、」
「え?」
「明日の朝も、会えるか?」
明日の朝?
「敬語が無くなるぐらい、会えたらなって思ってる」
壱成さんの言葉に、私はすぐに返事をすることが出来なかった。
自分勝手と思われるだろうか?
あんなにも私から「会いたい」「会いたい」と言っておきながら、壱成さんから「会いたい」と言われれば返事ができないなんて。
それでもお母さんに疑われているから、これ以上朝に会うと、もう朝も出て来れないかもしれない。
勉強しているのが嘘だと気づかれた時、お父さんに何を言われるか。
朝はもうダメ……。
だから。
その日の夜、壱成さんに正直に話すことにした。
『土曜?』
「…はい、あの、朝が早く出れそうになく」
『土曜は大丈夫なのか?』
「はい、いつも家で勉強していますが、その日は図書館に行くと言って出ますので…」
『それは親に誤魔化して家を出るって言うことか?』
「…そ、う、なります、でも、もう朝が難しくて、これしか…壱成さんに会うことが出来ません。ごめんなさい」
嘘をつく私を、嫌な女だと思うだろうか?
でも壱成さんに嘘をつくのも嫌だ…。
けれどもこうしないと壱成さんに会うことが出来ない。
『…じゃあ、図書館で会おう』
「え?」
『そうすれば、誤魔化したことにはならないから』