「なにかしら?思ってたよりもすごい方だからって圧倒されておいで?」

「いいえ。なぜ圧倒されなければならないのです?」

亜里香はあざ笑うように言った。

「その口を慎みなさい!目上への礼儀がなってないわ。

まあ、礼儀がなっていないから雄輝様に取り入ったんでしょu…きゃっ」

護衛兼癒し、いや、癒し兼護衛の、雄輝の使役獣瑠海が、悪役令嬢のような先輩の指にかみついていた。

先輩が手を振って瑠海を振り払うと、シャーと威嚇しながら、難なく床に着地、

そのまま亜里香の手に飛び乗った。

「あいかにょほが、えあいニャ。」

「うぇ!?しゃべった!えーと、『亜里香の方が偉い』って言ってくれたの?

なんでもいいけど、お手柄だよ!瑠海!」

「ちょっと、あたくしをけがをさせるとは!

何様のつもりかしら!」

先輩が一人でわめいているのをスルーして、亜里香は音楽室を出た。

扉を閉める直前、

「あたしをマジで怒らせたら、命ないからね」

と、静かに言い残して、教室に戻っていった。






「どーだった?え、まって?その猫なに⁉めっちゃ可愛いんだけど!」

結果を尋ねようとした美紗は瑠海を見て目を見開いた。

「あれ?今までも学校にも連れてきてたよ。

あ、でも、出てきたことはなかったか。

雄輝が作った使役獣。名前は瑠海

昨日まで一言もしゃべらなかったのに、ついさっきしゃべり始めたの。」

「にゃ、りゅみニャ」

「なにこの可愛いの!」

ほかのクラスメイトも集まってきた。

スマホを出して撮影し始めるのもいる。

「何騒いでるのー?もう5限始まるわよー。

って、なになに、この猫めちゃめちゃ可愛いじゃない!」

授業をしようと教室に入ってきた教師も、みんなに愛でられ、

とうとう教卓の上に置かれてた瑠海を見て、

はしゃがずにはいられないようである。

自分に向けられるたくさんの視線が嫌になったのか、

瑠海は亜里香のところへ戻ってきた。

「人気者になったね、瑠海!」

「りゅみ、にんきもの?」

「そう!人気者!」

「にゃ!」

そんな可愛すぎる光景にみんなはもだえ苦しみながら、授業を受けていた。